婦人

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婦人(ふじん)はくだけた呼び方であり、これは敬称ではない[1]

正しい敬称ご婦人(ごふじん)であり英語圏ではMs.に相当する。

一般的には成人女性全般または大人女性への敬称である[2][3]上流階級の女性には貴婦人があてがわれる[4]

類似する意味には成人女性全般を意味する婦女(ふじょ)は汎用性の高い女性と同義である[5]

概説[編集]

大正デモクラシーの時期、婦人という語は、普通選挙権要求運動とも連動し、斬新な響きを持った。「婦人公論」に代表されるように、「意識の高い成人女性」との響きさえあった。社会主義国家群でも、「婦人解放の日」を制定した[6]

婦人という語感が、「年輩女性」との意味合いも持つようになり、次第に使われなくなった。

男権優位的な言葉である夫人(これは既婚女性を指す)の代替語として使われたこともあったが、やがてフェミニズム論者に「婦」の字は「」に「」であり、女性差別的な表現であるために使わない方がよいと指摘されたことも[7]、使用が減ってきた原因の一つである。しかし「婦」の字の「」は清掃の道具ではなく、祭壇を掃き清める道具であると漢字学で解釈されている(詳しくは箒の語源を参照)ので[8]、安易な言葉狩りであるとも言われている。

現代の日本語においてより一般化した呼称が「女性」であり、丁寧な呼称が「ご婦人」「レディ」「淑女」である。上流階級の女性に対しては「貴婦人」という呼称となる。

注釈[編集]

  1. ^ 夫人」と「婦人」の違いとは?意味や違いを分かりやすく解釈”. 意味解説辞典. 2021年8月26日閲覧。
  2. ^ 御婦人(ゴフジン)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2023年12月9日閲覧。
  3. ^ 日本語でのご婦人の同義語や比喩表現”. Reverso Sinonimi. 2023年10月9日閲覧。
  4. ^ 貴婦人(きふじん)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2023年12月9日閲覧。
  5. ^ 「婦女」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書”. Weblio辞書. 2023年10月10日閲覧。
  6. ^ 漆田和代「『婦人』『女』『女性』 女の一般呼称考」れいのるず=秋葉かつえ編『おんなと日本語』有信堂、1993、ただし原論文は1980年。
  7. ^ 1990年9月の東京「都議会厚生文教委員会で三井マリ子議員(社会・都民会議)が「ほうきを持った女性をかたどった婦人の『婦』という字は性役割の撤廃という面からも非常に問題ある言葉。行政から率先して直すのが大切」と都側に要請。」「読売新聞」1991年7月11日「「婦人→女性」お役所言葉のトレンド 都では条例改正も」
  8. ^ 陳舜臣『元号の還暦』中央公論社、1992、pp.209-213、初出は「読売新聞」連載「三燈随筆」1990年8月6日

関連項目[編集]